LSDで走行性能アップ
車の動力伝達装置に関する基礎知識:ディファレンシャルギヤとLSDの役割
車を運転する際、私たちは普段その内部構造について深く考えることはあまりありません。
しかし、車がスムーズに走行したり、曲がったりするためには、さまざまな工夫が施された装置が働いています。
その中でも重要な役割を果たしているのが「ディファレンシャルギヤ(オープンデフ)」です。
ディファレンシャルギヤの基本的な機能
ディファレンシャルギヤは、タイヤへの動力を伝達する装置であり、ほぼすべての車に搭載されています。
その主な役割は、車が曲がる際に発生する左右のタイヤ間の回転差を吸収することです。
例えば、車がカーブを曲がるとき、外側のタイヤは内側のタイヤよりも長い距離を走る必要があります。このとき、ディファレンシャルギヤが回転差を調整することで、車はスムーズに曲がることが可能になります。
ディファレンシャルギヤの課題
しかし、このディファレンシャルギヤには一つの大きな課題があります。
それは、「回転数が多い方のタイヤに力を伝えてしまう」という特性です。
この特性が問題となるのは、片方のタイヤがぬかるみや雪などの滑りやすい場所にはまり込んで空転してしまった場合です。
この状況では、空転しているタイヤにばかり動力が伝わり、もう片方のタイヤには十分な力が伝わらなくなります。
その結果、車はその場から動けなくなるという事態に陥ることがあります。
LSD(リミテッド・スリップ・デフ)の登場
この問題を解決するために開発されたのが「LSD(リミテッド・スリップ・デフ)」です。
LSDは、片方のタイヤが空転してしまった場合でも、もう片方のタイヤにも動力を伝えるように設計された装置です。
これにより、車がぬかるみや雪道などでスタックするリスクを軽減し、より安定した走行性能を実現します。
LSDにはいくつかの種類がありますが、その基本的な目的は「動力を効率よく分配し、車両の走行性能を向上させる」ことです。
特にオフロード走行やスポーツカーなど、高いトラクション性能が求められる状況では、LSDは非常に重要な役割を果たします。
不整地での走行に対する不安と対策
車を購入したばかりの頃、雪道を走る機会がありました。
その際、平坦な雪道では問題なく走行できたものの、少しアクセルを踏むだけで後輪が滑り、車が流れてしまうという状況に直面しました。
さらに、緩やかな坂道では一度停止すると片輪が空転してしまい、車が全く動けなくなるという事態に陥りました。
この経験を通じて、以前乗っていた四輪駆動車の優れた性能を改めて実感することとなりました。
この車を購入する際、予算の都合で「冬はほとんど走らないから」と自分に都合の良い理由をつけて四輪駆動を省いたことが、この問題の根本的な原因でした。
四輪駆動の重要性を軽視した選択が、雪道や不整地での走行において大きな不安を生む結果となったのです。
車検を2回受けた後、ある観光地を訪れた際にも課題が浮き彫りになりました。
その日は前日の大雨の影響で駐車場が水浸しになっており、草の生えた地面が非常に滑りやすい状態でした。
駐車する際にはなんとか滑らずに停めることができましたが、車を出す際にはスリップしないかとひやひやしながら運転しました。
幸いにもスリップせずに車を動かすことはできましたが、この経験から、不整地に車を乗り入れることへの不安がさらに強まりました。
これらの状況を踏まえ、今後のクルマ旅を安心して楽しむためには何らかの対策が必要だと感じました。
そして最終的に、オープンデフをLSD(リミテッドスリップデフ)に交換するという選択肢に至りました。
LSDは、片輪が空転した際でももう一方のタイヤに駆動力を分け与えることで、安定した走行を可能にします。
この交換によって、不整地や雪道での走行性能が向上し、安心してドライブを楽しめる環境を整えることができると期待しています。
車選びは予算や用途に応じた決定を迫られることが多いですが、その選択が後々の使用感や安全性に大きく影響することを改めて痛感しました。
今回の経験を通じて、車の性能や装備について慎重に検討する重要性を学びました。
これからは、どんな状況でも安心して走行できる車作りを目指していきたいと思います。
今までのデフオイルを抜きます
近年の自動車技術の進化は目覚ましいものがあります。
その一例として、片輪の空転を防ぐ電子式の制御装置が挙げられます。
この装置は、路面状況やタイヤのグリップ状況をセンサーで感知し、適切にトルクを配分することで車両の安定性を確保します。
その結果、従来の機械式LSD(リミテッドスリップデフ)の必要性が薄れてきています。
以前は、特にスポーツカーやオフロード車ではLSDが重要な役割を果たしていました。
例えば、滑りやすい路面や急なカーブでの走行時に、片輪が空転すると車両のコントロールが難しくなるため、LSDを利用してトラクションを向上させることが一般的でした。
しかし、現代の電子制御技術はこれらの課題をより効率的に解決することが可能です。
駆動輪軸を取り外し
整備士さんは、ブレーキパットを解体した方が簡単ということで、まずはブレーキドラムを取り外して軸を抜いていきます
つぎにデフカバーの取り外し
シャフトとの繋ぎにもマーキングしておきます
デフカバーのナットが錆付いていて固く、ボルトごと抜けてきてしまいます
苦労しながらの取り外しでした
これがオープンデフ
一応バックラッシュ(ギアの遊び)をダイヤルゲージで計ってみると0.15mmあったので、トヨタの整備手帳にある許容値(0.13mm~0.18mm)のほぼ中間です
オープンデフから、リングギアを外します
ボルトのゆるみ止メがあるので、爪を曲げていき、10個のボルトを抜きます
リングギアは、均等に叩きながら外していきます
組付けたクスコのハイエース用1.5wayのLSD。
(品番 HBD-803-L15)
LSDにボールベアリングを圧着したところ
これに、リングギアを取り付けです
リングギアを入れ、ボルト抜け止めの爪を戻していきます
LSDをギアボックスに組み込む。
バックラッシュを0.15mmに調整して、車に組み込みです。
最後にクスコのLSDオイル(80W-90)を、オイルポンプで入れていきます。
ネットには、デフに入るオイル量の情報がいろいろとあったのですが、実際に入ったデフギアオイルの量は3リットルほどでした。
LSD交換後の試乗レポートと車中泊旅への期待
先日、愛車にLSD(リミテッド・スリップ・デフ)を導入し、その効果を試すべく初めての試し走行を行いました。
結果として、この改造がもたらす実用性と安心感をしっかりと体感することができました。
試走では、砂利道の急な坂道を走行する機会がありました。
その際、普通なら片輪が空回りするような状況でも、車はしっかりと前進し続け、難なく坂を登り切ることができました。
この瞬間に、LSDが確実に機能していることを実感しました。
通常であれば、片輪が空転すると車は前進力を失いがちですが、LSDの働きによって駆動力が適切に配分され、スムーズな走行が可能となったのです。
この改造によって得られるのは単なる走行性能の向上だけではありません。
これから始まる車中泊旅において、さまざまな地形や路面状況に対応できるという安心感が加わりました。
もちろん、過信は禁物ですが、これまで以上に自由な旅の計画を立てられるようになるのは間違いありません。
車中泊旅では、未舗装のキャンプ場や山道など、普通の車であれば不安を感じるような場所を通ることも多々あります。
しかし、LSDの効果により、こうした場面でも一定の余裕を持って走行できるようになり、旅そのものがさらに快適で楽しいものになるでしょう。
今回の改造は、単なるパーツ交換以上の価値をもたらしてくれました。
これからの旅がどのように広がっていくのか、大いに期待が膨らみます。